請求書の鏡(鑑)という言葉をご存知でしょうか。
請求書の明細と共に添付する頭紙のことです。
はじめて請求書を発行する新人のあなたにも疑問が生じる事でしょう。
鏡を付けた請求書と付けない請求書ではどのように違いがあるのか?
鏡を付けたパターンと付けないパターンの書式を紹介するとともにそれぞれ、何を記載するべきかを解説していきたいと思います。
同時に、同封する別紙明細書に関しても解説をしていきます。
この記事を読めば、請求書の鏡の意味や何を記載するか分かるようになります。
また、別紙明細書との違いや使い分け方などが分かり取引先に失礼の無い請求書を送る事が出来ます。
是非、チェックしてみてください。
Contents
請求書の鏡の意味は?
請求書の鏡には、請求書の合計金額等の要点を絞って書き出すと共に、取引先に敬意をもった挨拶を沿えて提出する請求書の表紙のことを指します。
ところで、「~の鏡」といった言葉を聞いたことがあると思います。
例えば「○○さんは教師の鏡だ」「○○さんは営業マンの鏡だ」であるように、この鏡には「~の」模範という意味を持っています。
その意味と同様で、取引先を思いやる請求書と言うことで「請求書の模範となる」という意味から請求書の鏡と呼ばれているそうです。
また、請求書に限らずビジネス文章の表紙にも鏡文(鑑文)というのがあります。鏡文と鑑文の違いについてはこちらの記事も参考にしてください。
締め日と回収日とは?
では、請求書の鏡には何を記載していくべきでしょうか?
説明する前に締め日と回収日のルールを理解しないと、請求書が発行できないので、いつまでも取引先から入金されません。
わかりやすく説明します。
あなたの取引先と支払い条件を契約時に取り決め、仮に末締め(1日~末日)翌月末払いだった場合、2019年10月21日に売上を計上した場合は、10月末締め請求書で、発送日は、締め日以降が通常です。
仮に、2019年11月1日を発行とします。
回収予定日は11月30日となります。
売上があって売上金を回収までが一連のフローとなります。
請求書の鏡の記載事項を図解で解説
①請求日付
まずは請求日付です。
作成日ではなく、発送日を記載します。
先程の例で言うと2019年11月1日が請求日付です。
締め日以前に請求書を発送してしまうと、発送から締め日までに売上が発生すると、その売上は翌月の請求書の対象となってしまうからです。
また、取引先が決算月の場合は、請求書を早く送ってくれというような指示がある事があります。
例えば取引先の決算月が10月末で、10月21日に売上があり、その後売上の予定が無い場合は、10月22日に請求書を発行する場合があります。
このような例外的に請求日付が早くなる場合もある事を頭に入れておきましょう。
②管理番号
次に管理番号(請求No)です。
管理番号(請求No)は必ず記載しなくても良いですが、毎月何百枚も請求書を発行している会社は、管理しやすいように社内ルールで入れておくのが一般的です。
理由は、取引先から問い合わせがあった時に管理番号で対応しやすいからです。
管理番号順にファイリングしておくと良いです。
③宛名
宛名を記載します。
宛名は会社名、部署、名前となります。
「株式会社〇〇」の「株式会社」は「(株)」と略さないよう気を付けましょう。
名前の最後は「様」と括りましょう。
④差出人
差出人です。
請求書から受け取る側として一体どこから請求書が来ているのか分かりやすく記載した方が良いです。
請求書について質問がしたい時に担当部署や担当者名が書いてあると受け取る側に親切です。
あたの名前を記載して、質問があった時にも回答が出来るように準備できているのがベストです。
⑤表題
表題です。
受け取った側が表題を見てすぐに理解できるものにしましょう。
「請求書のご送付」と簡潔に記載しましょう。
⑥本文
本文です。
挨拶も入れます。
取引先ですから、丁寧な文章で挨拶を入れて下さい。
「拝啓 時下ますます~」とテンプレートでもよいので記載しておきましょう。
次に目的の主文を記載します。
内容の記載はもちろん、金額、振り込み等のお願いも記載します。
「このたび、2019年10月21日付けで~中略~代金は別紙のとおり、合計121,000円となります。
つきましては、11月30日までに、下記の口座へお振込み頂くようお願い申し上げます。
なお、振込手数料に関しては貴社のご負担でお願い申し上げます」と、簡潔にまとめて記載しましょう。
(振込手数料については取り決めで取引先が負担しないルールになっている場合は、記載不要です。)
⑦振込先
最後に振込先です。
売上金の回収方法を集金や小切手、手形、振込など取引先に事前に聞いておき、振込であれば振込先を記載します。
社内ルールにもよりますが請求書に振込先をいくつか記載する事があります。
振込先をいくつか記載しておくと、仮に相手が振込手数料を負担した場合、手数料を安い方を選ぶことが出来る為、取引先にとっては、メリットがあります。
尚、振込の口座名義はフリガナを振ってあげると良いです。
特に会社名が難しい場合は、取引先も振り込む際に困る事が多いので、記載してあげると親切です。
別紙明細書の内容は次に説明します。
請求書の鏡と別紙明細書の違いを解説
請求書の鏡と別紙明細書の違い
前述に出てきました「別紙明細書」とは、請求書の明細のこととなります。
請求書の鏡では、日時、挨拶、請求金額となっていますが、ここでは請求金額の合計金額しか記載していません。
なぜ、この金額になったのかという内訳を記載するのが別紙明細書ということになります。
鏡と別紙明細書の両方の違いですが、一概には言えませんがざっくり言うと、以下の通りです。
- 鏡:一目で金額等がわかるもの(明細が多い場合は合計請求書としての役割)
- 別紙明細書:費用の詳細がわかるもの
では、どちらが「請求書類」として扱うのでしょか?
別紙明細書が必要なほど取引項目が多い場合は、合計請求書を鏡として、別紙明細書を添付して両方を「請求書類」として扱うケースもあります。
一方で、送付状として鏡を添付している場合は別紙明細書が書かれたほうを「請求書類」として扱うケースがあります。
請求書の鏡と別紙明細書の使い分け方を解説
請求書の鏡を付けた場合は、別紙明細書(請求明細書)が必要です。
前述の通り、「請求書の鏡」だけでは、内訳が判らないので、「別紙明細書」も添付すると記載していますが、例を挙げて確認しましょう。
例えば、あなたの会社が取引先にAIロボットを販売したとしましょう。
請求書の鏡には、日付、取引先名、挨拶、請求金額、振り込みの有無、支払い期限などを記載してお渡します。
もし、この書類だけであった場合、AIロボット単体の金額ということになります。
ですが、そこに添付されている明細書には、
- ロボット代金:100,000円
- 送料・設置料:10,000円
- 5年間メンテナンス費用:0円
と記載されているとすると、同じ代金でもメンテナンス費用が含まれていることが判ります。
同じ金額なのに明細書がないとメンテナンスが無料で受けられることを知り得ることが出来なくなります。
(なお、メンテナンスについての詳細は別紙、契約書などに細かく記載するのが一般的です。)
また消費税が込みなのか抜きなのかもわかりませんので、以下のように記載しておくようにしましょう。
- 税抜き合計:110,000円
- 消費税:11,000円
- 税込み合計:118,800円
また請求書には角印を押しましょう。
取引先によっては角印が無いと受け付けてくれない所もありますので、注意しましょう。
鏡と別紙明細書の使い分けですが、以下の通りです。
鏡 | 挨拶、いくらを誰にいつ支払うべきか簡単にわかるもの |
別紙明細書 | 費用の内訳などの詳細、税抜き・消費税・税込み |
こういった観点から考えると、一つの品物で他の要素が含まれない場合に限り、鏡に商品名を記載すれば、別紙明細書がなくても経理処理上、特に問題はありませんし、きちんとした証憑として扱われます。
ですが、請求書の鏡は冒頭で記載した通り、請求書の表紙(頭紙)です。
ビジネスマナーとしてのあいさつや相手が最終的にいくら支払うべきか一目でわかる心遣いが鏡である表紙として大事です。
逆に、会計上や税務上会社で客観的な証明として保管しておきたい場合は、送付状である鏡より明細がきちんとある「請求書類」になります。
請求書の鏡がない場合はどうなる?
請求書の鏡が無い場合は、表題は「請求書の明細書」ではなく「請求書」として発行します。
この「請求書」で相手が内容を理解して支払いをしてもらうようにしなければなりません。
挨拶などの記載はないので、受け手の印象としては、心証が悪く感じる人もいる事でしょう。
しかし、それでも鏡を付けないで、請求書のみで発行する企業も沢山あります。
というのも販売管理ソフトだと、請求書のみで発行しているところも珍しくなく、わざわざ鏡を付けない所も多いです。
ただ、初取引など、営業サイドとして、より丁寧な文章で請求書を出したい時は、鏡を付けるのも良いでしょう。
最後に
書類社会と言われる昨今、請求書一枚でも管理の対象になってきます。
どんなに簡単な請求書であっても、管理番号を記載し、決算に使用します。
そうなると、鏡と別紙明細書の2枚構成を避ける傾向にあることも少なくないです。
海外では請求書は明細を含み、1枚で簡潔にまとめていることも多くあり、日本でも同様です。
丁寧な挨拶を沿えるのは日本である理由が大きいですが、近い将来には、請求書の鏡が「古い習慣」と考えられてしまうかも知れません。
ですが、この日本人特有の「おもてなしスタイル」は今も先方様の気持ちを思った大切な習慣だと思います。
テンプレートで、と記載しましたが、大事な先方様にこそあなた自身の言葉を入れると、さらにこれからの取り引きに活きてくるかもしれません。